2012/4 より丸 13 年務めた クックパッド を退職しました (厳密には3末まで有給消化)。
こんなに長いこと在籍するとは入社時点の自分は想像していなかったと思う。4 年に一度くらい大きな変化がある会社だったので楽しめていたけど、それが無かったらもっと早く辞めてただろう。様々な経験をさせてもらえた会社には感謝しつつ振り返り。
振り返り
入社直後 2012 年時点での自分はめちゃくちゃ Junior な状態で、そこから今に至るまで様々な仕事をしてきた。 https://sorah.jp/about にだいたい書ける範囲では書いているけれど…。
まずは Rails 2.x → 3.2 や Ruby 1.8 → Ruby 1.9 といった大きめのアップグレードから CIや分散テスト実行環境の整備は初期の仕事として印象深い。13 年前って感じのタームだ…。protect_from_forgery 以前の CSRF 対策コードを Rails 標準のそれに移すとかは渋くてしんどかったけど面白かったところ。そこからは 高速デプロイを支える mamiya, envchain や nginx_omniauth_adapter の開発もあった。このへんからインフラやセキュリティに軸を置くようになっていった気がする。
その後は海外展開の初期でベイエリアに創業者率いるチームから繰り返し呼び出しを受けたり、海外チームの SRE の立ち上げをしたりもあった。結果としてはこの時から新規に起こしていた global-* のシステムが 2024 年に日本のモノリス cookpad_all からデータ移行を受けて https://cookpad.com/ とアプリの中身が日本向けも global-* になった訳だから感慨深い… (One Experience Project; パフォーマンス面の問題とかは諸々まだまだあるけれど)。
Security や Developer Experience の話から少しはみ出て Corporate Engineering (IT, 情シス) の分野の仕事もいくつかして、たとえば 2021 年オフィス移転時のネットワークリプレイスや、IPsec VPN を Twingate に置き換えたり、Google Workspace プライマリドメイン変更 などもあった。こちらの方面でも海外チームの立ち上げをしたりもし、今となってはむしろ日本チームより主体的に MDM 方面の改善に取り組んでくれていて助かる。他にも表に分かりやすく出ていない仕事様々。
退職事由
2024 年振り返り記事 は実は事実上の退職宣言1で、そこを読むのが経緯としては早いと思う。振り返りを書く前からゆるく転職活動をしていて、色々あり 1 月末がデッドラインになっていた。人が減って様々な仕事が自分に降ってきた上で、経営との交渉や議論に時間を取られたりやる気を削がれたり、2024 年を通して何か面白い・自分のためになる新しい学びを得られる事がなく、その点でもモチベーションも維持できなかったというのが残念ながら大きな理由。足りないヘッドカウントや決裁権を貰ってもすぐに状況がどうにかできるとは思えなかったし、2025 年も同じようになりそうな話題が降ってきていた。
一方、自分が楽しいと思える・そしてやるべき事にフォーカスして、増えた仕事は一旦放り投げるという選択肢も無くなかった、というか、経営から提案されたけれど、そうは言うものの放り投げる相手がそもそも居ない、かつ視界に入ってしまう以上フォーカスしきれる気がしなくて、乱暴な解決策として会社ごと変えるという選択肢を取る選択をした 2。ポジティブに話すなら同じ会社に 12 年居て、会社にいる人も減っているとなると得られる視界が同じまま。そして現状の期待に対して自分の capability に限界を感じていて、足りないものを違う環境で鍛錬しにいきたいというの理由になると思う。One Experience という大きなプロジェクトも終わったし、自分がやれる事はだいぶやったと思いたい (もちろんまだまだ取り組みたかった事はあるけど…)。
そして One Experience を含め、会社のフェーズがあらためて 0→1 になっているのを感じている。そこ含めてミスマッチで、現状の報酬で FTE として居続けてもお互いのタメにならないよねと思うに至った。この理由を含めて素直に伝えても引き止めはあったし給料も微妙に上がったのは(当たり前とは思いつつ)ありがたい話。
悔い?としてはこんな中でも日本の SRE チームはメンバーが大きく変わらず全員優秀で、その上で純粋な(?) パソコンおたくが多くてプログラミング言語の話などをすると乗ってくる人が多かったのはかなり環境として良かった。最後の最後までこのチームメイトから離れるのか~という点は悩んだポイントだった。
転職活動
結果として数は少ないけど 3 社程度と話して急ピッチでオファーを貰って決定まで進めたりしていた。言語化してみると以下のような軸と気持ちがあったと思う。この上で事業に関しては諸々あるけれど、そこについては割愛。
- 自分に十分な裁量をくれる小さい組織である
- でも小さすぎてもいけず、モチベーションになる十分な影響範囲や「困り」を観測するためにある程度人数がいる組織
- 歴史が長いシステムや仕組みに立ち向かうというよりは、新規に何かを作ったり改善していく仕事を中心にしたい
- 単にJSON色付け屋するだけじゃない何か特有の技術要素がある
- 英語に関しては使う機会があった方が嬉しいけど要件にはしない
- 外資や海外に行く元気はない (日本の大半の外資だと大企業になっちゃうという問題もある)
- 転職活動期間も短いし、一旦あきらめることに (クックパッドでは 4 割くらい verbal 含む英語だったのでだいぶ減っちゃうね)
- フルリモート希望ではないが、物理出社のトップダウンによる強制は心理的に嫌なので減点
- というか現状でも無視しているしトップダウンによる強制は守れる気がしない
- Ruby を利用していること (= RubyKaigi といった Ruby 方面のコミュニティ活動への理解)
- RubyKaigi のスポンサーリストを見て転職活動をした
- Rust 使えたら加点, Go に減点
- 趣向
- AWS に加点、GCP に減点
- macOS を SSH クライアントと見做し Linux マシンで仕事できたら加点
- メイン端末に Windows PC を持つのを許容してくれたら加点
- 2024/1- 報酬 の現状維持以上のベース報酬があれば加点
- ゴミをゴミと言っても許されそうなチームである
- 友人・知人が多くもなく少なくもない程度にいると良い
事業的に面白そうでも技術面で合わないとか、技術的に面白そうでも組織面で合わないとか、当然100点の会社はなかったんだけど、複数社といろいろ面白い話ができたので楽しかった。各社には急ピッチで話を詰めてもらうなど、良いお返事を出来なかった会社含めて感謝です。
次
ヘンに speculate されても嫌なので書いてしまうと、2 週間有給消化を挟んで 2025/4 から IVRy で 何でも屋こと Principal Engineer として働く予定。
ただ何をするかは(様々な課題は知りつつ)あんまり決まっていない。戦友 mirakui も居るし3、他に何人かクックパッド出身の人間がいて楽しそうにしているので、文化的に親和性があって半分くらいコンフォートゾーンから出て…って選択肢でまぁバランスいいだろう、と思ってたらなんか決定後からさらに同郷の人間が増えてコンフォートゾーンから余計に出ないヤツみたいな自己認識になりつつあります。2024 年振り返り で書いた通り、自分は誰と働いて楽しく過ごすかを重視している側面が強いのであんまり気にしてはいませんが 4。引き続き Cloud Infrastructure, Security, IT の領域を軸にしつつチャレンジングな仕事を見つけて楽しむ予定です。
有給消化ではあるものの RubyKaigi 2025 の準備が佳境だったりで休んでる感じはあんまりしなさそう 5。時期が悪い。これも見越して 26 日あった有給を退職前の今に至るまで有給を既に 16 日くらい vacation で使ったのでいいことにする。入社直後も最低限のオンボーディングを受けながら RubyKaigi をやりきってから本格稼動の予定。入社直後も準備とカンファレンスで 2 ~ 3 週間くらい姿くらますけど…って事に対して OK してもらえたのはありがたい話 6。
クックパッドから引き続き何でも屋ポジションなので、次はいかに自分の視界を絞ってフォーカス、人に振れる仕事は振るというのをきっちりやれるようになりつつ、アウトプットを出していきたい。数社の中から直感で決めたので上手くいくかは分からない上、この狭いWeb業界内にいることは変わらないので、引き続きみなさん仲良くしてください。おわり。
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あのセクションは釣り針のつもりだったんだけど誰からも声かけられなかったです ↩
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さすがに実務をたくさん持っていて人間も少ないとなると短期間で引き継ぎは不可能なのでしばらく業務委託で籍は残る予定 ↩
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戦友がいるところに行くのは時期尚早かなと思いつつ、他に条件にマッチする会社がなかったので諦めてむしろもう一度やっていくぞという決意をしました。当の本人もsorah抜きの世界観に一旦満足したらしいです、知らんけど。上司部下じゃなくてピアな形でやっていくのはチームを組んでいるISUCON関連を除けば久々かもしかしたら初? ↩
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自分が楽しく働くために人を見すぎるという側面があって、この点では経営ってやつには絶対向かないな自分は…と認識させられる出来事はこの1年たびたびあった。今後も向かないと思って生きていく ↩
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2025/4 に開催が迫っているため、一部ロジはクックパッドのオフィスでやり切る事になってるので前職になったはずのオフィスに度々足を運ぶ予定でこの点も感覚を狂わせる ↩
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クックパッドが RubyKaigi で今年 Wi-Fi Sponsor でもないのは転職を控えてるからなのでした (伏線だったのだ)。一方で IVRy の時間で準備している訳でもなく、今年は Wi-Fi Sponsor は不在って感じに。 ↩